ナダールとless than more
- Toshio Inose
- 2022年5月6日
- 読了時間: 1分
事務所の写場には、背景布とストロボと椅子、そしてカメラしかない。選べる衣装も、新品のアンティークの家具もない。
理由は、簡単だ。私が写場で撮りたいのは、家具でも衣装でもない、人だから。
ナダールの肖像写真は、私の理想である。シンプルな背景、笑顔ではなく、むしろキツイ表情の人も多い写真。おもちゃで遊ぶ子供の写真など、時代的にかもしれないが一枚もない。ナダールの子供の写真ですら笑っていない。家族写真もキリッと写っている。
写場で撮るならば、スマホでは撮れない写真が良いと考えている。写真を撮ることが特別でなくなった現代、写場で撮るなら特別であっても良いと思う。自然な表情でない、特別な自分を写してもらうのも良いだろう。
もちろん、自然な笑顔の写真も素敵なのであるが、写真に対する価値観は、そこだけで完結するものではない。写真は自由なのである。写真に対する解釈は、選べる衣装や作られた雰囲気、笑顔で縛られるものではない。
考えられる限り、シンプルで被写体を撮らせてもらう。写真もless than moreで良いと考える。
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